【2016年6月10日号】口の乾き
口の中は通常、唾液腺から分泌される唾液により湿っています。湿っている事で粘膜は保護され、食事の嚥下を助け、感染から防御されています。唾液には消化に役立つ酵素の他、抗菌作用のある免疫物質が含まれています。このため、口の中が乾燥してきますと、虫歯ができやすくなったり、舌が荒れやすくなったり、食物を飲み込みにくくなる事があります。
乾燥の原因は様々ですが、病気ではないものとしては加齢による唾液の減少があります。女性では閉経後に唾液分泌が減少する事が報告されていますが、男性ではあまり若い頃と変化は見られないようです。対症療法が中心となります。
経験上最も多いのは薬剤によるものです。売薬の風邪薬の中に、特に鼻水止めには唾液分泌を減少させる成分が含まれているものがあります。病院で処方される風邪薬にも旧来のもので一部含まれているものもありますが、新世代の薬ではそのような副作用は軽減されています。また気管支を広げるための薬や頻尿の治療薬で抗コリン剤が使用される事がありますが、副作用として唾液分泌が減少することがあります。うつやストレスで使用される抗うつ剤や抗不安剤などは複数同時に処方されることも多く、乾燥の原因になることがあります。原因薬剤を中止することで改善がみられます。
膠原病の一つにシェーグレン症候群というものがありますが、唾液腺に炎症を起こす事で唾液腺の働きが弱くなり、唾液の分泌が減少し徐々に乾燥が進行していきます。進行すると乾燥はかなり強く、からからに乾く事もあります。専用の治療薬がありますが、先程の抗コリン薬の逆の働きがありますので気管支の病気、頻尿などがある方は悪化する事になりますので注意が必要です。