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江別市の耳鼻咽喉科-くろだ耳鼻咽喉科クリニック

良性発作性頭位眩暈症

はじめに

めまいの原因はいろいろありますが、大きく分けると中枢性(脳)、末梢性(内耳).その他(貧血、低血圧、高血圧、不整脈、自律神経失調、心因性、疲労など)が考えられます。中枢性では脳梗塞、脳腫瘍などが代表的ですが頭痛、嘔気、体の麻痺、舌のもつれなど典型的な症状が揃えばまず脳外科を受診される方が多いでしょう。末梢性はより神経の脳から見て遠い側、主に内耳性を意味し、メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎などが有名ですが、日常外来では良性発作性頭位眩暈症が最も頻繁に見かけられるように思います。ある統計ではめまい全体の25-40%が、また内耳性の中では40-70%が良性発作性頭位眩暈症との報告があります。

特徴としては、

1. 頭を急に動かした時、寝返り、寝起きなどで数十秒続く回転性のめまい、またはふらつき

2. 日に日に症状が弱くなり、自然と消失することが多い

3. めまい以外には難聴、耳鳴り、頭痛、しびれなどの神経症状が無い事

があげられます。なお、嘔気、頭痛は中枢性、末梢性、自律神経失調などでめまい発作時には広く出現し、必ずしも脳の異常を意味するものではありません。

原因

現在では原因は半規管の中に誤って入ってきた耳石によると考えられています。耳石は本来、半規管の付け根の前庭という部分の中にある耳石膜に含まれている炭酸カルシウムの小粒子です。半規管内に耳石が入ると、頭を動かす度に耳石も移動し、それが半規管内のリンパ液を動かす事により神経の信号として脳に入ります。しかし反対側の正常な半規管からはそのような信号は入らないため左右のバランスを崩し、回転感、ふらつき感となります。しばらくじっとしていることで耳石やリンパ液の移動も止まりますので数十秒程度で自然とめまいは収まる事になります。半規管基部の組織に耳石が付着するタイプのものがありこちらはじっとしていてもめまいが持続する事があります。

検査

1.検査

良性発作性頭位眩暈症は難聴、耳鳴りなどは伴いません。片側に難聴が認められた場合はメニエール病や突発性難聴を疑う事になります。

2.眼振検査

眼振は自分の意思とは無関係に眼球が揺れたり回転したりするものです。めまいが強い場合は直接目をのぞき込んでも観察できますが、何かを見つめている状態では眼振が抑えられるため、通常は赤外線モニターを装着したゴーグルをかぶせ真っ暗にした状態で観察します。良性発作性頭位眩暈症では眼振の向きが頭の位置により特徴的であるため、典型的な眼振が確認できればほぼ診断を確定できます。発症後しばらくしてめまいが収まった後では確認できない事もあります。

治療

1.経過観察

多くは治療しなくても1週前後で自然に軽快し消失します。

2.薬

対症療法となります。内耳性めまい全般に使用するめまい止めの内服がありますが、頭を動かした時のめまい発作に対してはあまり効果が無いように思われます。

3.耳石置換法法

半規管内に迷い込んだ耳石を一定の手順で頭を回す事で前庭に戻す方法です。原因となる耳石が左右どちらの半規管にあるか、また前、後。水平、3つある半規管のどれにあるかにより方法が違うため、正確な診断が必要になります。簡易的には座った状態から急速に横に倒したり起きたり、横になって寝返りを90°ずつ行うなどあります。耳石が付着しているタイプにおいてはあまり有効ではありません。

いずれにしろ、めまいを恐れるあまり体を動かさないことが改善を遅らせる原因になりますので、強い発作が治まった後は積極的に体を動かす必要があります。