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江別市の耳鼻咽喉科-くろだ耳鼻咽喉科クリニック

小児の急性中耳炎の難治化

背景

急性中耳炎は中耳にウィルスや細菌が侵入し感染することで、痛み、発熱、耳だれなどの症状を起こします。まだ現在のように抗生剤が簡単に使用できなかった時代、治療は鼓膜切開により内部に貯留した膿を出すのが主流でした。その後ペニシリンを中心とした内服薬が普及し、切開せずに内服で治療する事が可能になりました。しかし広く抗生剤が使われるようになると、細菌が抵抗力を持ち始め(耐性化)、効果が出なくなります。そこで、耐性化した細菌を叩くために新しい抗生剤が開発され、またしばらくすると耐性化することを繰り返し現在に至ります。

原因菌

主にウィルスと細菌のどちらか、または両方の混合感染により発症します。 ウイルスではかぜのウィルス、インフルエンザウィルス、RSウィルスなどが原因となります。インフルエンザを除いてほとんどのウィルスに有効な薬はないので、基本的には痛み止め、解熱剤など対症療法となります。しかし同時に細菌感染を併発していることも多いため、ある程度以上の重症例には抗生剤が投薬されることもあります。
細菌では肺炎球菌、インフルエンザ菌(インフルエンザウィルスとは別物)、モラキセラの三つが原因となることがほとんどです。前二者については特に耐性化が進んでおり、ほとんどの内服薬が無効なものも増えてきています。

経路としては鼻汁から、または喉の一番上方である上咽頭にいる細菌が耳管を通って中耳に侵入します。鼓膜に穴が開いてなければ耳に入った水やシャンプーなどから感染する事はありません。



難治化の要因

抗生剤の乱用

必要以上に抗菌力が強いもの、または不十分な効果のもの、を使用し続けることにより耐性化が起こりやすくなります。治りにくい中耳炎では原因菌を検査で確認し、効果のある抗生剤を使用する必要があります。現在耐性化が進んだ菌にも有効な内服薬がいくつかありますが、耐性化していない、本来不必要な例にも使い続ければいずれその薬も耐性化し、全く内服薬の無効な菌が出現する恐れがあります。これ以上耐性菌を増やさないためには、切り札となる薬は大事に必要な時にのみ使用することを心がけなければなりません。

集団保育

保育園などで長時間多数の子と接触している時間が増えることから、感染する機会も増える事になります。一度治療してもすぐにまた次の中耳炎を繰り返す反復性中耳炎が問題になってきています。特に2才以下の乳児は免疫力も十分には発達していないため、治りにくく反復しやすい傾向にあります。


治療

・軽度、中等度の場合は抗生剤の内服でまず数日経過を見る事になります。

・内服が無効だった場合や重度なものでは抗生剤を増量したり、細菌検査の結果を見て変更します。

・痛みが強い場合や発熱が続く場合には鼓膜切開し排膿することも考慮します。

・反復するものでは切開後に鼓膜にチューブを留置する方法もあります。

・内服抗生剤が無効の場合は入院して点滴抗生剤での治療を考慮します。

基本的には成長と共に改善します。かぜの流行する時期に特に繰り返しやすく注意が必要です。