副鼻腔は年齢と共に発育し高校生から20歳頃にほぼ完成します。
図に示しましたように小児では空洞そのものが非常に小さく、鼻腔にすぐ接していることが特徴です。
鼻腔の広さも大人より狭く、鼻風邪の鼻水や粘膜の腫れで容易に詰まりやすい構造になっています。
また、乳幼児は免疫も未発達であるため、風邪のウィルスや引き続いての細菌感染も起こしやすく、保育園、幼稚園などの集団生活から感染の機会も多くなっています。
乳幼児ではほとんどが風邪の鼻炎に引き続いて、または同時に感染により起こるため、急性のものがほとんどです。そのため風邪の急性鼻炎と合わせて急性鼻副鼻腔炎とも呼ばれます。
風邪後数日以内であれば風邪と同じウィルスが副鼻腔に感染していると考えられますが、1週間以上に渡って鼻汁や詰まりが続き、黄色くねばねばした鼻汁に変化している場合は細菌の感染に移行していることが疑われます。
・鼻汁、鼻詰まりを起こしますが小児では訴えがない場合も多く、長引く痰と咳で発見されることがあります。
・鼻をかんでも出しにくいため、のどに下がり湿った音の咳が出ます。
・細菌感染が高度の場合、頭痛、顔面痛が起こることがあります。
・鼻内の細菌が中耳に入ることで急性中耳炎の原因になることがあります。
鼻内を観察し、膿性の鼻汁を確認します。のどに膿が下がっていないかも同時に見ます。
副鼻腔の膿の貯留を確認するにはレントゲン撮影を行いますが、乳幼児では図に示したように副鼻腔が小さくきれいに写らないこと、少量ですが放射線被曝もありますので、当院では4~5歳までは行わないことにしています。
感染の原因としてウィルスが疑われる場合は、種類を確認する検査は一般レベルでは難しいこと、特効薬はなく自然に改善することから特には施行しません。細菌の感染が疑われる場合は、急性中耳炎の項目で述べたのと同じ、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラの3種がほとんどと考えられます。急性中耳炎と同様に抗生剤に対する耐性化が進んでいるため、集団保育児や改善し難いときには細菌検査を行い薬の有効性を確認します。
初期の軽症の段階では、鼻炎薬の内服、鼻汁の吸引、吸入薬で経過をみます。なるべく鼻はすすらずにかむ方がよいですが、年齢的に難しい場合は市販の鼻吸い器を使用するのも良いと思います。中等度以上または5~7日経過しても改善しない場合は抗生剤を使用しますが、急性中耳炎の項で述べましたように薬の耐性化をふまえた選択が必要で、始めから強力な薬は使用せず、初期治療が無効なとき、または耐性菌が疑われる場合にのみ使用する事が大切です。
慢性化した副鼻腔炎の場合は大人と同様に数ヶ月程度薬を使用する事があります。
小児では骨が発育途上であるため、大きなポリープがある場合を除き、手術は基本的には行いません。
成長と共に鼻副鼻腔が拡大し通気が改善し、風邪をひく機会も減少することで自然に改善することもあります。